海外移住で日本の持ち家をどうするかは、帰国予定の有無で決まります。貸す場合は家賃から20.42%、売る場合は譲渡代金から10.21%が源泉徴収されるのが原則で、どちらも出国前の納税管理人の届出が前提です。空き家のまま置くと税・劣化・管理責任の3方向で負担が増えます。
この記事でわかること
- 帰国予定の有無から貸す・売る・活用するを判定する手順
- 非居住者になると変わる源泉徴収の扱い(賃貸20.42%・譲渡10.21%)
- 出国前に済ませる納税管理人の届出と、遅れた場合に起きること
- 空き家のまま置いた場合に増える税・劣化・管理責任の負担
- 相続した実家など建物を残しにくい土地で取れる活用と解体の選択肢
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結論を先に書きます
出国してしまうと、日本国内の手続きは一気に動かしにくくなります。だから判断は出国前に済ませるのが原則です。
方向は3つしかありません。貸す・売る・活用する。どれを選ぶかは、数年以内に日本へ戻る予定があるかどうかでほぼ決まります。
そして共通して必要なのが、税務署への納税管理人の届出です。これを出しておかないと、確定申告や納税の窓口が国内に存在しない状態になります。
- 方向は貸す・売る・活用するの3つ
- 賃貸収入は原則20.42%が源泉徴収され、確定申告で精算する
- 売却は譲渡代金の10.21%が源泉徴収されるのが原則
- 出国前に納税管理人の届出を済ませる
- 空き家のまま置くと住宅用地特例が外れることがある
帰国予定の有無で方向が決まる
最初に決めるのは金額ではありません。「数年以内に日本へ戻るか」です。
持ち家の方向は3つ
- 数年以内に日本へ戻る予定はありますか?
- A貸す数年以内に戻るなら。定期借家契約なら期間の満了で返してもらえる
- B売る当面戻らないなら。出国前に終えれば非居住者の手続きが発生しない
- C活用する相続した実家や土地で、貸すのも売るのも難しいとき
どれを選んでも、出国前に納税管理人の届出を済ませます。
図:帰国予定の有無で、貸す・売る・活用するの方向が決まる
数年以内に戻るなら「貸す」が基本
帰国後に住む場所を確保しておきたいなら、賃貸に出す形が現実的です。定期借家契約にしておくと、契約期間の満了で確実に返してもらえます。
普通借家契約だと、貸主の都合での明け渡しには正当事由が必要になります。戻る前提なら契約形態を先に決めることが重要です。
当面戻らないなら「売る」を検討する
戻る予定が立たない場合、維持コストだけが積み上がります。固定資産税・火災保険・管理費が毎年出ていきます。
出国前に売却まで終えると、非居住者としての手続きが発生しません。時間に余裕があるなら出国前の売却が手続き上は最も簡素です。
実家を相続した場合は「活用」も選択肢
自分の住まいではなく、相続した実家や土地の場合は事情が変わります。建物が古く借り手がつかないケースでは、貸すことも売ることも簡単ではありません。
この場合は、土地としての活用や、建物を解体して土地を整える方向が現実的な検討対象になります。
非居住者になると税の扱いが変わる
ここが見落とされやすい部分です。日本を出て非居住者になると、国内不動産の収入に対する課税の仕組みが変わります。
非居住者が「貸す」「売る」ときの税の扱い
- 源泉徴収
- 家賃を払う借主が20.42%を源泉徴収して納付する
- 精算
- 確定申告で経費を差し引いて精算。還付になることもある
- 例外
- 借主が個人で自己または親族の居住用に借りる場合は不要
- 前提
- 出国前に納税管理人の届出
- 源泉徴収
- 買う側が譲渡代金の10.21%を源泉徴収して納付する
- 対象
- 売却益ではなく譲渡代金全体にかかる
- 精算
- 翌年の確定申告で精算する
- 前提
- 出国前に納税管理人の届出
図:非居住者になると源泉徴収の扱いが変わる。貸す・売るのどちらでも納税管理人の届出が前提
貸す場合:家賃から20.42%が源泉徴収される
非居住者が国内不動産を貸すと、家賃を支払う側(借主)が20.42%を源泉徴収して納付するのが原則です。手取りはその分減ります。
ただしこれは前払いのようなもので、確定申告で経費を差し引いて精算します。減価償却費・修繕費・管理委託費などを計上すると、還付になることもあります。
なお、借主が個人で自己または親族の居住用に借りる場合は、源泉徴収が不要とされています。
売る場合:譲渡代金の10.21%が源泉徴収される
非居住者から不動産を買う側は、譲渡代金の10.21%を源泉徴収して納付するのが原則です。こちらも翌年の確定申告で精算します。
売却益ではなく譲渡代金全体に対する割合である点が、実務では驚かれるところです。手元に入る金額の見込みを立てるときは、この分を先に引いておきます。
納税管理人の届出は出国前に
確定申告や納税の窓口として、日本国内に納税管理人を置く届出が必要です。親族や税理士に依頼する形が一般的です。
出国後に手続きしようとすると、書類の郵送と本人確認で時間がかかります。出国前に済ませるのが確実です。
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空き家のまま置くと負担が増える
「とりあえずそのまま」が、いちばん負担の増える選択になりがちです。理由は3つあります。
空き家のまま置いたときに増える負担
- 「とりあえずそのまま」で増える3つの負担
- 税が増える特定空家等に指定されると、固定資産税の住宅用地特例から外れる
- 建物が傷む通風がなく湿気がこもり、排水トラップの水が蒸発して臭気が逆流する
- 管理責任が残る塀の倒壊・屋根材の落下・庭木の越境の責任は所有者に残る
図:空き家を放置すると税・劣化・管理責任の3方向で負担が増える
住宅用地特例が外れることがある
住宅が建っている土地には、固定資産税の住宅用地特例が適用されています。空家等対策の特別措置法にもとづき特定空家等に指定されると、この特例の対象から外れます。
つまり、建物を残しているのに税の軽減が受けられない状態になり得ます。
通風・通水がないと建物は早く傷む
人が住まない家は劣化が早く進みます。通風がないことによる湿気、排水トラップの水が蒸発することによる臭気の逆流などが起こります。
年に数回の管理を誰かに頼めるかどうかが、実務上の分かれ目になります。
管理責任は所有者に残る
塀の倒壊、屋根材の落下、庭木の越境などが起きたとき、責任を負うのは所有者です。海外にいると、初動が遅れます。
遠隔で持ち続けるなら、管理を誰に任せるかまで決めてから出国するのが前提になります。
建物を残しにくい土地の選択肢
相続した実家などで、貸すにも売るにも難しい場合の選択肢を整理します。
建物を残しにくい土地で取れる選択肢
| 選択肢 | 向くケース | 確認しておくこと |
|---|---|---|
| 土地として活用する | 駅・幹線道路に近い | 用途地域・接道・周辺の需要 |
| 建物を解体して更地にする | 建物の傷みが進んでいる | 解体費用と、更地後の固定資産税 |
| 管理を委託して保有し続ける | 将来使う予定がある | 年間の管理費用と点検頻度 |
| 売却する | 使う予定がない | 非居住者の源泉徴収と申告 |
解体すると住宅用地特例が外れるため、更地の固定資産税は上がります。解体は「その後どうするか」とセットで決めるものです。
活用の方向を先に知っておくと、解体するかどうかの判断材料になります。
出国前チェックリスト
不動産まわりで、出国前に片付けておくと後が楽になる項目です。
- 納税管理人の届出(税務署)
- 固定資産税の納付方法(口座振替・納税管理人経由)
- 火災保険の契約者住所と連絡先の変更
- 賃貸に出す場合は管理会社との契約と契約形態の決定
- 売却する場合は媒介契約と、決済までのスケジュール
- 郵便物の転送先(国内の受取人)
銀行口座やクレジットカードの扱いも同時に整理しておくと、家賃の受け取りや納税がスムーズになります。詳しくは海外移住で日本の銀行口座・クレジットカードはどうなるかで扱っています。
よくある質問
Q1:海外移住したら日本の家は必ず処分しないといけませんか
必要はありません。貸す・保有し続けるという選択もできます。ただし非居住者としての課税と管理の手当てが必要になるため、出国前に体制を決めておきます。
Q2:家賃から20.42%引かれた分は戻ってきますか
確定申告で経費を差し引いて精算します。減価償却費・管理費・修繕費・固定資産税などを計上した結果、納めすぎになっていれば還付されます。
Q3:納税管理人は誰に頼めばよいですか
日本国内に住所がある個人または法人であれば依頼できます。親族に頼む方もいれば、税理士に委託する方もいます。申告まで任せるなら税理士が現実的です。
Q4:出国前に売るのと、出国後に売るのはどちらがよいですか
手続きの簡素さでは出国前です。出国後は源泉徴収と確定申告が加わります。ただし売り急ぐと価格面で不利になることもあるため、滞在予定と市況の両方で判断します。
Q5:実家が空き家のままですが、遠方から管理できますか
管理を委託するサービスを使えば、通風・通水・外観点検を定期的に行えます。年間の費用と点検頻度を確認したうえで、保有し続けるか手放すかを判断してください。
Q6:土地活用の資料請求をすると、その後どのように連絡が来ますか
依頼した会社から提案と連絡が届きます。海外在住の場合、時差があるため連絡手段の希望を申し込み時の備考欄に書いておくと調整できます。
まとめ:判断は出国前に、体制ごと決めておく
- 方向は貸す・売る・活用するの3つ。帰国予定の有無で決まる
- 賃貸は家賃の20.42%、売却は譲渡代金の10.21%が源泉徴収される
- 納税管理人の届出は出国前に済ませる
- 空き家のまま置くと税・劣化・管理責任で負担が増える
- 解体はその後の使い道とセットで決める
- 戻る前提なら定期借家契約を検討する
移住の準備はビザと住居の手配に意識が向きがちですが、日本に残す資産の扱いは後回しにすると選択肢が減ります。
出国日から逆算して、不動産の方向だけでも先に決めておくと安心して出発できます。
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※本記事は公開情報および公的機関の資料をもとに整理したものです。税率・要件は改正される場合があり、個別の事情によって取り扱いが異なります。具体的な申告・納税・契約の判断については、税理士・宅地建物取引士など有資格の専門家および所轄税務署へご確認ください。

