海外移住しても、年金の受給資格そのものは失われません。老齢年金は原則10年の加入期間で受け取れ、海外居住中も国民年金への任意加入で年金額を増やせます。受け取りは日本の口座でも海外の口座でも可能ですが、受け取り続けるには毎年1回の現況届が必要です。
この記事でわかること
- 海外移住で年金の受給資格そのものは失われない(老齢年金は原則10年の加入期間)
- 海外居住中は国民年金への任意加入で年金額を増やせる/しない期間はカラ期間になる
- 年金は日本の口座でも現地の口座でも受け取れる(送金コストと為替で選ぶ)
- 受け取り続けるには毎年1回の現況届が必要(未提出だと支給が一時停止)
- 「もらえない」の多くは誤解=脱退一時金は日本国籍者は原則対象外
公的情報源: 日本年金機構「老齢基礎年金の受給資格期間」(参照)/「任意加入制度」(参照)/「海外にお住まいの受給者の現況届」(参照)
海外移住で年金はどうなる?受給資格は失われない
先に結論です。海外移住しても、日本の年金の受給資格そのものは失われません(日本年金機構/2026年7月時点)。これまで納めた保険料は消えず、要件を満たせば海外にいても年金を受け取れます。
「海外に住むと年金がもらえない」という不安をよく耳にしますが、多くは誤解です。老齢年金は、保険料を納めた期間などが原則10年(120か月)以上あれば受給できます(日本年金機構・受給資格期間/2026年7月時点)。この10年は、海外移住で自動的にリセットされるものではありません。
海外移住で本当に確認すべきは「もらえるか」ではなく、次の3点です。
- 加入を続けるか:任意加入するか、しないでカラ期間にするか
- どこで受け取るか:日本の口座か、現地の口座か
- 受け取り続ける手続き:毎年の現況届を出せるか
まず、自分が受給資格を満たせるかを確認します。
海外でも年金を受け取れるかの判定
- 保険料を納めた期間などは、10年(120か月)以上ありますか?
- 10年以上海外にいても受給できる老齢年金は原則10年以上の受給資格期間があれば受け取れる(日本年金機構)
- 10年未満3つの仕組みで補える任意加入・カラ期間の算入・社会保障協定の期間通算で10年に届くことがある
- 分からないまず加入期間を確認するねんきんネット等で受給資格期間の見込みを把握するのが先決
図:海外移住で年金を受給できるかは加入期間で判定する(2026年7月時点)
受給資格の考え方(海外居住期間の扱い)
海外に住んでいた期間があっても、その分の扱いには救済の仕組みがあります。日本国籍の人が海外に住んだ期間は、任意加入しなければ「カラ期間(合算対象期間)」として受給資格の年数に算入されます(日本年金機構/2026年7月時点)。
さらに、日本と社会保障協定を結んでいる国で公的年金に加入していれば、その加入期間を日本の期間と通算できる場合があります。出国前後の手続き全体は海外移住の税金・年金・社会保険の手続きリストで確認できます。
海外移住後の国民年金|任意加入とカラ期間の判断
先に結論です。海外移住後の国民年金は、「任意加入して年金額を増やす」か「加入せずカラ期間にする」かの二択で考えると整理できます(日本年金機構/2026年7月時点)。
日本国内に住民票がある間は国民年金の第1号被保険者ですが、海外へ転出して住民票を抜くと、その資格ではなくなります。転出届と年金の関係は海外転出届の出し方と必要なもので詳しく整理しています。
カラ期間(合算対象期間)とは
先に用語を押さえます。カラ期間(合算対象期間)とは、受給資格の年数には数えるが、年金額には反映されない期間です(日本年金機構/2026年7月時点)。20歳以上60歳未満の日本国籍者が海外に住み、任意加入しなかった期間がこれにあたります。
つまり任意加入しなくても「受給資格を失う」わけではありません。ただし、その期間分の年金額は増えない、という理解が正確です。
海外移住後の国民年金には、続けるか続けないかで次の分かれ道があります。
海外転出後の国民年金は二択
- 任意加入して増やすか、加入せずカラ期間にするか
- 任意加入する:年金額が増える20歳以上65歳未満の日本国籍者が対象。納めた期間分、老齢基礎年金が上乗せされる
- 任意加入する:備えが広がる加入中は障害年金・遺族年金の対象になりうる
- 任意加入しない:カラ期間になる受給資格の年数には数えるが、年金額には反映されない期間
図:海外移住後の国民年金は任意加入するかしないかで結果が分かれる(2026年7月時点)
任意加入する場合のメリット
海外居住者の任意加入は、20歳以上65歳未満の日本国籍者が対象です(日本年金機構・任意加入制度/2026年7月時点)。加入を続けると、次の点で有利になります。
- 年金額が増える:納めた期間分、老齢基礎年金が上乗せされる
- 障害年金・遺族年金の対象になりうる:加入中の万一に備えられる
- 受給資格の10年に確実に近づく:加入期間が足りない人ほど効果が大きい
保険料は、日本国内の親族などが代わりに納める方法か、日本国内の預貯金口座からの引き落としで納めるのが一般的です。加入するかは、加入期間の不足度と保険料の負担感で判断します。
海外での年金の受け取り方法|日本口座と現地口座の選び方
先に結論です。海外での年金は、日本国内の口座でも、居住国の金融機関の口座でも受け取れます(日本年金機構/2026年7月時点)。どちらが得かは、送金コストと為替、生活費をどの通貨で使うかで変わります。
受け取り方法は、大きく2つです。日本の口座に振り込み続けて必要なとき自分で送金・引き出す方法と、居住国の口座へ直接受け取る方法です。現地口座で受け取る場合は、金融機関名・支店名・口座番号のほかSWIFTコードなどの情報と口座証明が求められるのが一般的です。
日本の口座で受け取る場合と現地の口座で受け取る場合を並べて比べます。
年金をどこの口座で受け取るか
- 通貨
- 円で管理できる
- 向く人
- 日本にも生活・資産の拠点がある/将来帰国の可能性がある
- 手間
- 必要なときに自分で送金・引き出す
- 注意
- 送金手数料と為替レートの差が生活コストに効いてくる
- 通貨
- 現地通貨で直接受け取れる
- 向く人
- 生活費のほとんどを現地通貨で使う/日本口座を維持しにくい
- 手間
- 送金の手間が減る
- 注意
- SWIFTコードなどの情報と口座証明が求められるのが一般的
図:年金の受け取りは日本口座と現地口座のどちらも可能(2026年7月時点)
受け取り方法の向き不向き
- 日本口座が向く人:日本にも生活・資産の拠点がある/将来帰国の可能性がある/円で管理したい
- 現地口座が向く人:生活費のほとんどを現地通貨で使う/日本口座を維持しにくい/送金の手間を減らしたい
日本口座で受け取って現地へ自分で送るなら、送金手数料と為替レートの差が生活コストに効いてきます。海外送金の仕組みとコストはWise(ワイズ)海外送金の使い方で整理しています。なお、非居住者になると日本の銀行口座の扱いが変わる場合があるため、口座を維持できるかは事前に金融機関へ確認しておきます。
年金を受け取り続ける手続き|現況届は毎年1回
先に結論です。海外で年金を受け取り続けるには、毎年1回、誕生月に「現況届」を日本年金機構へ提出する必要があります(日本年金機構・在外受給者の現況届/2026年7月時点)。これを出さないと、支給が一時的に止まります。
日本国内の受給者はマイナンバーで生存確認ができるため現況届は原則不要ですが、海外居住の受給者は現況届の提出が必要です。届には、居住地の在外公館などが発行する「在留証明」を添えるのが一般的です。
受け取り開始・継続の流れ
- 受給開始の請求:年金の受給開始年齢に達したら年金請求書を提出する(海外からも手続き可能)
- 受け取り方法の届出:受取口座(日本口座または現地口座)を指定する
- 毎年の現況届:誕生月に現況届と在留証明を提出し、生存と居住を確認してもらう
- 住所・口座の変更:転居や口座変更があれば速やかに届け出る
提出が遅れて支給が止まっても、後から現況届を出せば再開される扱いが一般的です。ただし手続きに時間がかかるため、誕生月の案内が届いたら早めに対応するのが安全です。
「年金がもらえない」と誤解される3つのケース
先に結論です。「海外移住で年金がもらえない」と言われる原因の多くは、受給資格・手続き・制度の3つの誤解に整理できます(日本年金機構/2026年7月時点)。実際は、対処すればもらえるケースがほとんどです。
誤解1:加入期間が10年に足りない
老齢年金には原則10年の受給資格期間が必要です。海外居住が長く期間が足りない場合でも、カラ期間の算入・任意加入・社会保障協定の期間通算で10年に届くことが少なくありません。まず自分の加入期間を確認するのが先決です。
誤解2:現況届を出さず支給が止まった
受給資格はあるのに、現況届の未提出で支給が一時停止しているだけ、というケースです。これは「もらえない」のではなく「手続きが止まっている」状態で、届を出せば再開される扱いが一般的です。
誤解3:脱退一時金でもらえると思っている
「もらえないなら脱退一時金で受け取ればいい」という誤解です。次の見出しで詳しく触れますが、脱退一時金は日本国籍を有しない人向けの制度で、日本人の海外移住者は原則対象外です(日本年金機構/2026年7月時点)。
脱退一時金は海外移住で使える?日本国籍者は原則対象外
先に結論です。脱退一時金は「日本国籍を有しない人」が対象の制度で、日本人の海外移住者は原則として使えません(日本年金機構・脱退一時金/2026年7月時点)。ここは誤解が広がりやすい点なので、順に整理します。
脱退一時金は、日本国籍を持たない人が国民年金・厚生年金の被保険者資格を失って出国した場合に、日本に住所を有しなくなってから2年以内に請求できる制度です。支給額の計算に使う月数の上限は、2021年4月から36か月(3年)分から60か月(5年)分に引き上げられました(日本年金機構/2026年7月時点)。
脱退一時金を使えるかどうかは、国籍で判断します。
脱退一時金を使えるかの判定
- 日本国籍を持っていますか?
- 日本国籍あり脱退一時金は原則対象外脱退一時金は日本国籍を有しない人が対象の制度(日本年金機構)
- 日本国籍なし出国後2年以内に請求できる支給額の計算に使う月数の上限は2021年4月から60か月(5年)分に引き上げ
- 受給資格あり一時金でなく年金で受け取る10年の受給資格期間を満たすなら、老齢年金として受け取るのが基本
図:脱退一時金を使えるかは国籍で判定する(2026年7月時点)
日本人の海外移住者が取る現実的な選択
日本国籍の人は脱退一時金を使えないため、次の順で考えるのが現実的です。
- 加入期間を確認する:ねんきんネット等で受給資格期間の見込みを把握する
- 不足しそうなら任意加入を検討:10年に届かせる・年金額を増やす
- 受給時期に受け取り方法と現況届を準備:日本口座か現地口座かを決める
脱退一時金は「払った分を清算して受け取る」制度に見えますが、日本人にとっては使えないうえ、受給資格の考え方とは別物です。混同しないよう注意します。
よくある質問(FAQ)
Q1:海外移住すると年金はもらえなくなりますか?
いいえ。海外移住で年金の受給資格そのものは失われません。老齢年金は原則10年の加入期間で受け取れ、海外にいても受給できます。加入期間が足りない場合も、カラ期間の算入・任意加入・社会保障協定の期間通算で10年に届くことがあります。まず自分の加入期間を確認するのが先決です(日本年金機構/2026年7月時点)。
Q2:海外に住みながら国民年金は払い続けられますか?
払い続けられます。20歳以上65歳未満の日本国籍者は「任意加入」を選べます。加入すると年金額が増え、障害年金・遺族年金の対象になりうる利点があります。保険料は、日本国内の親族が代わりに納めるか、日本の預貯金口座からの引き落としで納めるのが一般的です。加入するかは、加入期間の不足度と保険料負担で判断します(日本年金機構・任意加入制度/2026年7月時点)。
Q3:海外の口座でも年金は受け取れますか?
受け取れます。日本国内の口座でも、居住国の金融機関の口座でも受け取り可能です。現地口座で受け取る場合は、金融機関名・支店名・口座番号やSWIFTコードなどの情報と口座証明が求められるのが一般的です。日本口座で受け取り自分で送金する方法もあり、送金手数料と為替を踏まえて選びます(日本年金機構/2026年7月時点)。
Q4:海外で年金を受け取るために毎年必要な手続きはありますか?
あります。海外居住の受給者は、毎年1回、誕生月に「現況届」を提出します。届には在留証明を添えるのが一般的で、生存と居住の確認に使われます。提出しないと支給が一時的に止まりますが、後から出せば再開される扱いが一般的です。案内が届いたら早めに対応するのが安全です(日本年金機構・在外受給者の現況届/2026年7月時点)。
Q5:海外移住するなら脱退一時金でもらった方が得ですか?
日本国籍の人は原則として脱退一時金を使えません。脱退一時金は「日本国籍を有しない人」が対象の制度で、日本を出てから2年以内に請求します。日本人の海外移住者は、任意加入で受給資格や年金額を確保し、受給時に日本口座か現地口座で受け取る形が現実的です。混同しないよう注意してください(日本年金機構・脱退一時金/2026年7月時点)。
まとめ|海外移住の年金は「受給資格・受け取り・手続き」で整理する
- 海外移住で年金の受給資格そのものは失われない(老齢年金は原則10年)
- 海外居住中は任意加入で年金額を増やせ、しない期間はカラ期間(資格には算入・額には不反映)
- 受け取りは日本口座・現地口座のどちらも可能(送金と為替で選ぶ)
- 受け取り続けるには毎年1回の現況届(未提出で一時停止)
- 脱退一時金は日本国籍者は原則対象外=「もらえない」の多くは誤解
海外移住と年金は、「もらえるか・もらえないか」の二択ではありません。受給資格を確認し、任意加入するかを決め、受け取り方法と毎年の現況届を準備するという順で整理すると、必要な行動が見えてきます。
加入期間や受給の見込みは一人ひとり違います。金額や資格に関わる判断は、ねんきんネットで自分の記録を確認したうえで、日本年金機構や市区町村の窓口に個別確認してから進めると安心です。
免責事項
※本記事は一般的な情報を整理した参考情報であり、個別の年金・受給資格・受け取り方法の判断は必ず日本年金機構・市区町村・年金事務所等の公式窓口にご確認ください。記載の制度・要件は2026年7月時点の公開情報を参考にしており、取り扱いは個人の国籍・加入歴・居住国の事情により異なります。

